大人の発達障害とは

発達障害は、生まれつきの脳の発達の違いによるものです。発達障害のある人は、脳機能の発達がアンバランスであるために行動や態度に様々な特性が現れます。

発達障害の特性は子どもの頃から現れますが、その頃は個性の一つとして捉えられたり、周囲からフォローされたりして、本人も周囲も発達障害と気づかずに大人になることがあります。しかし、進学や就職で社会に出ると、「大人ならこうすべき」と期待されることが多くなります。つまり、相手の表情から自分がどう行動したらいいかを察したり、仕事を計画的にすることなどを要求されます。それまで表面化しなかった発達障害の特性が浮かび上がり、その時に初めて、本人や周囲が発達障害に気づくケースがあります

以前はその特性から来る失敗や困難さを、「本人の努力不足や親の育て方のせい」とされることがよくありました。今でもそうした傾向は残っています。そんな誤解の中で自らの特性や対処法を学ぶことなく育ち、社会に出てから頑張ってもうまくいかず、深く傷つく中でようやく「発達障害」という言葉と出会い、診断を受けた、というケースも少なくないのが現実です。

発達障害とは

1.自閉症スペクトラム(ASD)

  • 言葉や視線、表情、身振りなどで他人とコミュニケーションをとるのが苦手
  • 他人に対する興味が薄く、相手の気持ちや状況を理解することが苦手
  • 特定のことに強い関心を持っていたり、こだわりが強かったりする
  • 感覚の過敏さ、または鈍さがある

このうちいくつか当てはまれば「自閉症スペクトラム」の可能性があります。


2.注意欠如・多動症(ADHD)

  • 注意し続けることができない、集中することが出来ない
  • 落ち着きがない、色々なことに気が散ってしまう
  • 待つことができない
  • 衝動のコントロールが出来ない
このうちいくつか当てはまれば「注意欠如・多動症」の可能性があります。


3.学習障害(LD)

  • 「読む」「書く」「計算する」などの能力が全体的な知的発達に比べて極端に苦手


発達障害の検査は難しい

①発達障害は「スペクトラム」であること

「スペクトラム」とは、「連続体」という意味です。診断の明確な境界線があるのではなく、あいまいな境界を持ちながら連続していること、症状や困っている度合いに強弱の濃淡(グラデーション)があるということです。

「普通の人」 
(定型発達者)
グレーゾーン 「発達障害」の
  傾向が強い人

  • 発達障害の特徴は、普通の人(定型発達者)にもみられることが多いものです。普通の人(定型発達者)であっても発達障害の傾向はゼロではなく、そういう意味では、人は誰でもグレーゾーンであるとも言えます。上の図で言えば、どのくらい右側にいるのか/左側にいるのか、グレーの濃度がどのくらい濃いか/薄いかという、発達障害の傾向が強い・弱いの違いがあるだけです。
  • 例えば「落ち着きがない」はADHDの一つの特徴ですが、落ち着きがある人とない人との明確な線引きはありません。また、落ち着きがある方が良く思われますが、見方を変えれば、落ち着きがないということは「好奇心が旺盛で活動的」とも言えるので、必ずしも悪いことではありません。
  • その人の属している社会や状況によってはそれが個性や魅力とみなされ、充実した人生に繋がっている人もいます。例えばダ・ビンチ、ピカソ、エジソン、スティーブ・ジョブズなどは発達障害だったと言われています(敬称略。参考:「発達障害という才能」岩波明 SB新書)。
  • 一般人の「発達障害者」であっても、ご自身の対応や周囲の理解があって、さほど困らずに暮らしている人もいます。そういう人には改めて「発達障害である」と診断する必要はないと言えます。
  • ただ、「自分も周囲も困っていることが多い、背景に発達障害があるかもしれない」ということであれば、医療機関で診断を受け、適切な対応を一緒に考えていく必要があるかもしれません。その基準は「日常生活に支障があるかどうか」になります。

②明確なチェックリストがない

  • 発達障害は内科や外科等の診断名とは違い、血液検査の数値や、レントゲンでわかるということはありません。
  • 明確な基準がないため、医療機関によっては非常に簡便な質問紙だけで診断することもあります。ネットでも簡単なチェックリストなどが出ていますが、それだけで判断してしまうのは危険であると当院では考えます。
  • つまり、本当は発達障害であるのに「見落とし」をしてしまったり、逆にちょっとしたグレーゾーンにあるだけなのに発達障害だと決めつけてしまう「過剰診断」をしてしまったりする可能性があります。
  • また、何らかの他の病気が原因で、発達障害のような症状が出ていることもあります。例えば躁うつ病(双極性障害)やうつ病等が原因のこともあります。一方で、発達障害のためにしんどさを抱えてうつ病などになる場合(二次障害と言います)もあります。二次障害が生じると、そちらばかりが注目され、根本的な原因である発達障害への気づきや対処が遅れてしまう恐れもあります。
  • 当院では、より正確な診断のために2~3時間の検査を実施し、更に「幼少期はどんな子どもだったか」「現在の困りごと」などを聞き取りして、総合的に判断をします。時間も手間もかかりますが、適切な診断のためには必要なことと考えています。


当院の 初診 ~ 検査 ~ 検査後の流れ

【1】電話にて新規来院予約を取る
【2】相談員が困りごと等について聞き取り後、医師が診察し、検査実施の必要性の判断をします
【3】発達検査 実施(必要に応じてさらなる聞き取りも実施)
【4】検査の結果を書いたレポートをお渡しします
(発達障害があるかどうかにかかわらず、受検者全員にお渡しします)
発達障害の診断あり 「グレーゾーン」又は
「発達障害の傾向が殆どなし」
日常的に困っていない 発達障害の程度が大きく、日常生活にかなり困っている 日常生活にかなり困っている 日常生活にはさほど困っていない
困りごとが出てきたときには、またご相談ください 精神福祉手帳の申請や障害年金の申請を検討 精神福祉手帳や障害年金の申請はできませんが、しんどいことや困りごとへのアドバイスをしたり、一緒に考えたりします 困りごとが出てきたときには、またご相談ください
検査をすることで、知的な遅れが分かったり、他の病気の可能性に気づいたりすることもあります。その程度によっては、手帳や障害年金の申請を検討したり、個別の困りごとについて一緒に考えたりします。

ご希望に応じて、生活や就職等の相談をしたりします。すぐに就職が難しい場合でも、まずは精神科デイケア(当院の建物内にあります)で生活リズムを整えたり、人と話す練習の場としたり、作業所の見学・体験や、障害者枠での就職なども視野に入れ、ご本人のペースに合わせた支援をします。当院であれば、デイケアの見学・体験や就職の相談もスムーズに行なえます。


当院で検査するメリット

日常生活、特に人間関係で困ることが多いようならば、一度検査をすることをお勧めします。検査の結果、発達障害と診断され、場合によっては精神保健福祉手帳の取得の申請に繋がったり、年金の申請に繋がったりする可能性もあります。


しかし、「発達障害」と診断されることに抵抗がある場合は、無理に検査を受ける必要はありません。そもそも、発達障害があっても、日常で困ることもなく生活出来ている人もいます。また、「困ることはあるが診断されるのが嫌だから検査も受けたくない」というのであれば、それはそれでご本人の意志として尊重されるべきことです。

ただ、ご本人や周囲が困っており、その原因の一つとして発達障害の可能性があるようなら、検査をしてみることをお勧めします。結果として発達障害という診断が下りなかったとしても、グレーゾーンの中でもどのくらいグレーが濃いのか・薄いのかを知ることも一つの気づきになります。また、検査をする中で、ご本人の得意なこと・不得意なことが分かったり、「しんどいところはこうやってカバーすればより生きやすくなる」ということが分かれば、それだけでも何らかの救いになるのではないでしょうか。


最も大切なのは、その結果を踏まえてご本人がどうなさるかだと当院では考えています。ご自身の特徴や、得意なこと・不得意なことを知り、「変えられないことを受け入れ、変えられることを変えていく」ことを考え、実行していくこと。当院で検査を受けていただくと、生活や就労支援等の相談や、精神科デイケアの利用もよりスムーズに行えます。皆様が今より少しでも生きやすくなるため、より豊かな人生を生きるためのお手伝いをしたいと思っています。

医療法人敬天会 星のクリニック
〒569-0023
大阪府高槻市松川町25-5
TEL:072-662-8121
FAX:072-662-8123

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